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適合不良をなくすには?アルジネート印象の正しいとりかた

適合不良をなくすには?アルジネート印象の正しいとりかた

2019年10月発行 No.84 / 記事執筆:宮岡

適合不良の原因

先日、サンエス石膏株式会社のインストラクターをお招きして、デモンストレーションをまじえた印象採得の研修をおこないました。弊社ではシリコン印象を推奨しておりますが、症例によっては連合印象を使用する場合もあると思います。今回は臨床におけるアルジネート印象の注意点をご紹介したいと思います。

アルジネート印象の寸法変化

忙しい日常臨床の中で、昼休みや診療後にまとめて石膏を注いだりしていませんか?ルーティーンワークとしてとても効率的なやり方なのですが、この行為が適合不良をもたらしている可能性があります。 

アルジネート印象材の主成分は「水」です。そのため、印象採得後にそのまま放置すると蒸発して収縮し、逆に水の中ではアルジネート印象材が水を吸収して膨張します。湿箱中でもわずかに収縮します。

たった1時間でこれだけ寸法変化してしまうので、印象採得したら速やかに石膏を注ぐ必要があります。すぐに注ぐことが出来ない場合は、印象材が直接水に触れないように注意して湿箱で保管するか、より変形を抑えるために、時間による印象材の寸法変化を抑えつつ印象体の除菌効果もある「アルジネート印象材用の固定液」の使用が有効です。

また、印象材がトレー後縁からはみ出ていると、置いたときや石膏の重みで変形する可能性があるので、事前にはみ出した部分をカットしておくと安心です。

適合に影響する面荒れ

印象採得後に速やかに石膏を注がなければいけない理由はもう1つあります。それは、印象を放置しておくと面荒れにも影響を与えるからです。アルギン酸塩系印象材と寒天印象材には、その性能を出すための添加剤が入っています。この添加剤は印象してからの時間が長い程、印象面に滲み出してきます(離液現象)。添加剤の中には、石膏に添加されている添加剤の硬化遅延効果を増大する効果を持っているものがありますので、印象面に接触している石膏の面だけが硬化不充分になり面荒れをおこします。硬化の遅れた部分は、すでに硬化している内部の石膏に、硬化に必要な水分を吸収されてしまうため、間が経過しても硬化できないままとなってしまうのです。

まとめ

変形・面荒れした印象をもとに製作した補綴物は、当然ながら口腔内では適合しません。再印象された模型で技工物を再製作し、試しに最初の模型に戻してみて明らかに大きな不適合が確認ができた場合は、印象変形の影響が強く疑われます。印象採得~模型作成は基本的な作業ですが、とても重要な工程となります。

サンエス石膏さんでは、全国の医院さんにもデモをおこなっているそうです。従業員のスキルアップに活用されてみてはいかがでしょうか。

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