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歯科の印象採得がうまくなるコツとは?外し方や嘔吐反射への対処法も解説

歯科の印象採得がうまくなるコツとは?外し方や嘔吐反射への対処法も解説

歯科の治療の中で印象採得は、毎日行われる手技の一つですが、慣れが必要な手技でもあります。

「どうすればもっと印象採得がうまくなるのだろう?」と悩んでいる人も多いのではないでしょうか。

そこで、この記事では印象採得が上達するコツをまとめました。

日々の臨床の参考になれば幸いです。

歯科の印象採得の種類とは?

歯科で行う印象採得にはいろいろなパターンがあり、求められるものも異なります。

支台歯や歯肉など全ての部位がうまく印象採得できるのが理想ですが、初めはそんなにうまくいきません。

最低限必要な部位の印象採得ができるように考えて取り組むことが大切です。

印象採得を行う目的

印象採得は、主に義歯・歯冠補綴装置・インプラントの作製が目的となっています。

印象採得の目的

義歯の印象採得

義歯の印象採得の目的は、レジン床や金属床、バーやクラスプを作製することです。

鉤歯や粘膜、顎堤がしっかり辺縁まで印象できることが大切です。顎堤に凸凹がある場合などは、経験があっても難しい場合もがあります。

どんな義歯を設計しているのかを確認し、とくに鉤歯には気泡が入らないようにしなければなりません。

歯冠補綴装置の印象採得

歯冠補綴装置の印象採得は、インレーやクラウン・ブリッジを作製することが目的です。

支台歯と欠損部顎堤は、特に精密な印象が採れるように注意が必要になります。

インプラントの印象採得

インプラントの印象採得は、インプラントの仮歯や最終補綴装置を作製することが目的です。

自費の治療なので、初心者のうちから任せられることは少ないかもしれません。印象用アバットメントと欠損部顎堤の印象が精密に採れるように注意します。

印象用トレーの種類

印象用トレーの種類としては、網トレー・シリコーン印象用トレー・個人トレー・無歯顎用トレーなどがあります。

さまざまなメーカーが販売しているので、医院によって取り扱うトレーは異なります。メーカーによって形態やサイズなども違います。

網トレー

網トレーは主にアルジネート印象で用います。シリコーン印象用トレーは既成のトレーで、シリコーン印象に用います。

個人トレー

個人トレーは最初にアルジネート印象を行って模型を作製し、その模型上でレジンを用いて作製したトレーです。

患者さんの歯列に合ったトレーなので、使用するシリコーン印象材が既成トレーよりも少なくて済み、寸法変化が最小限に抑えられてより精密な印象採得ができるといわれています。

無歯顎用トレー

無歯顎用トレーは、残存歯がない場合に用います。

無歯顎で顎堤吸収が大きく網トレーでの印象採得が難しい場合などに用いると、印象採得が行いやすい場合があります。

印象材の種類

印象材の種類には、アルジネート・寒天アルジネート・シリコーン・コンパウンドなどがあります。

アルジネート

アルジネート印象は、一般歯科でよく用いられます。シリコーンに比べると精度は劣りますが、簡便で安価に印象採得できるためです。

義歯作製や個人トレー作製、マウスピース作製などで用います。

寒天アルジネート

寒天アルジネート印象も一般的によく用いられます。

アルジネート単体よりも精度が高くなり、歯冠補綴装置作製には寒天アルジネート印象を用いることが多いです。

2種類の印象材を用いるので、アルジネート単体の印象よりも手技は難しくなります。

シリコーン

シリコーン印象材は、アルジネート印象材に比べるととても高価です。

精度は高い印象材なので、ロングスパンのブリッジや難症例、インプラントの印象で用いることが多いです。

コンパウンド

コンパウンドは主に義歯作製で用いられます。義歯辺縁のボーダーモールディングや概形印象などで用いることが多いです。

手順別に解説!歯科印象採得のコツ

印象採得にも種類はありますが、一般歯科で最もよく用いられる寒天アルジネート印象材を用いて、網トレーで歯冠補綴装置作製のための精密印象採得をする方法を例に解説していきます。

チェアーのポジションは、上顎ではある程度倒し、下顎はあまり倒さないほうが口腔内をしっかり見ることができます。

自分に合うポジションを見つけることが大切なので、練習をしましょう。

トレーの選択

中切歯近心から大臼歯後縁までの歯列の長さをミラーの柄などでおおまかに測定し、使用するトレーのサイズを選択します。

トレーにはサイズが何パターンかあるので、あらかじめ覚えておくと良いでしょう。

トレーの試適

実際に歯列全体を覆えているか、トレーを試適して確認します。

印象採得をする深さまでトレーを挿入し、歯肉や頬粘膜などの軟組織に痛みがないか患者さんに確認しましょう。

歯列に対して、トレーの大きさが不足している場合は、大きいトレーに交換します。

智歯が萌出している場合など、歯列の奥行きが長くトレー後縁からはみ出ている場合はユーティリティワックスなどで辺縁を延長してください。

下顎隆起や口蓋隆起、その他骨隆起などがある場合はトレーの辺縁が当たると痛みを強く感じたり、傷を作ってしまうのでトレーをできる限り変形させて避けたりして、挿入する深さにも注意します。

下顎では実際の印象採得の際に行う舌運動などの練習をしておいてください。

アルジネート印象材の練和と盛り上げ

慣れないうちは、冷水を用いてアルジネート印象材を練和します。

柔らかすぎると奥に流れてしまうため、硬めがいいと言われています。

しかし、硬すぎると硬化が早まり寒天アルジネート印象が難しくなったり、印象精度が悪くなったりするため、メーカー推奨の粉液比を必ず守りましょう。

トレーに盛るときは、できる限りラバーボウルから一塊で取り出し盛ると気泡が入りづらくなります。

アルジネート印象材が多量に後縁に流れると嘔吐反射を引き起こすので、適度な量にしてください。

特に上顎の口蓋後方は、印象材を盛りすぎないようにしましょう。

歯冠補綴装置の支台歯部分のアルジネートには気泡が入らないよう注意が必要です。

寒天印象材の流入

支台歯の血液や唾液、歯肉溝滲出液などをエアーで飛ばして乾燥させ、寒天印象材を流します。

支台歯の近くの歯や歯肉から寒天印象材を流し始め、シリンジの先端を寒天溜まりから浮かせないようにし、マージン部分を一定の方向に1周させましょう。

支台歯がしっかり隠れるまで寒天を盛ります。

トレーの挿入

アルジネート印象材を盛り上げたトレーを口腔内に挿入します。

この際、寒天を流した部分に頬粘膜や口唇が触れると寒天が流されてしまうため、ミラー等を用いて軟組織の排除を確実に行いましょう。

そして、臼歯部から前歯部へトレーを圧接します。

トレーの辺縁が口角や粘膜に当たらないように、しっかり粘膜を排除しながら挿入してください。

挿入したら左右臼歯部を軽く押さえて、トレーが浮かないように注意します。

患者さんがトレーを咬むこともあるので、しっかり硬化するまで動かないよう見ておきましょう。

印象材の撤去

印象材に無理な力がかからないように注意しながら撤去します。

とくに寒天部分は変形したり、壊れたりしやすいので丁寧に扱ってください。

臼歯部を持ち上げるようなイメージで撤去すると外しやすいでしょう。

外しにくい場合は、トレーの辺縁からエアーを入れると浮き上がってきます。

嘔吐反射のある場合の印象採得のコツ

嘔吐反射が起こりやすく、印象採得を嫌だと感じている患者さんは多いようです。

歯科医院に行きたくない理由にもなるので、不安を感じている患者さんには特に丁寧に対応しましょう。不信感を抱かれないように接することが大切です。

声掛けをする

患者さんに苦手意識がある場合が多いので、落ち着くような声掛けをしましょう。

「もし苦しかったら手を挙げてください」など意思を示す方法を伝えると、不安が和らぎます。

印象材をもりすぎない

特に臼歯部の印象材が多くならないように気をつけましょう。印象材が多いと、余剰な印象材が喉の方に流れてしまい、嘔吐反射を起こしやすくなります。

柔らかすぎる印象材も喉に流れるため注意しましょう。

部分トレーを使用する

全顎トレーでなく、部分トレーでも問題なければ部分トレーを用いると、嘔吐反射が起こりにくくなります。

チェアーを起こす

硬化待ちの時間に嘔吐反射があれば、チェアーを起こして座位にすると落ち着きやすくなります。

印象採得の最初のポジションも、上体を起こし気味にしている方が呼吸しやすく印象材が喉に流れることを防ぐことが可能です。

歯科印象採得を上達させる学ぶコツは?

印象採得は、自分一人の練習ではなかなか上達が難しい手技です。

学生時代に経験を積ませてもらえる環境であればよいのですが、最近はそんなに多くの経験を積むことが難しくなっています。

そこで印象採得が上達するコツをまとめました。

同僚や友人に感想を聞く

印象採得はある程度の経験が必要です。同僚や友人などに協力してもらって、印象採得を練習し感想を聞きましょう。

痛みがあったり、嘔吐反射が起こったりすることもあります。患者さんは我慢してしまうことが多いので、きちんと意見を聞くことも大切です。

練和を繰り返し練習する

アルジネートは機械練和であれば問題ないですが、手で練和するのであれば練習が必要です。

気泡を入れず適度な硬さで練和しなければ、きれいな印象採得をすることはできません。

季節によっても水の温度や印象材の硬さは異なるので、注意が必要です。

まずはアルジネート印象材から

シリコーン印象材は、アルジネート印象材での印象採得に慣れてくると、あまり難しくないと思います。

まずは寒天アルジネート印象の技術を習得しましょう。

失敗しても再度挑戦する

もし印象採得で失敗してしまっても、患者さんに説明してもう一度挑戦させてもらいましょう。

どういう理由で失敗したのか考え、回数をこなすことで上達していきます。

まとめ:歯科印象採得の上達にはコツがある

印象採得で気をつけたい上達のコツをご紹介しました。

印象採得はベテランの歯科衛生士さんでも、毎回100点の印象を採れるわけではありません。

それは患者さんの口腔内はそれぞれ違っており、支台歯や顎堤の状態も複雑だからです。

たくさんの経験を積むことで、こういう場合にはどう対応すると良いという考えが浮かぶようになります。でも100%ではありません。失敗することもあります。

そのような時に、患者さんにもう一度印象採得させてもらい、同じ失敗は繰り返さないように気をつけることが最も重要です。

まずは印象採得のコツをしっかり頭に入れ、どんな部位に注意して印象採得をするのかイメージしてから実践するよう心がけましょう。

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