支台歯形成において大事なのは、クリアランスの確認です。
支台歯形成が正確にされていないと、クラウンやブリッジなどの補綴物を合着した際に破折や噛み合わせが合わないなど、不具合が起こる可能性があります。
今回は、支台歯形成のクリアランス確認方法や支台歯形成時のポイントを踏まえて解説します。
支台歯形成とは
支台歯形成とは、クラウンやブリッジを装着しようとする歯を形成する作業のことです。
支台歯形成において欠かせない点は、以下の2点です。
- クラウンやブリッジの着脱が可能なこと
- 保持力や強度、咬合関係、適合性が十分に確保できる形態に形成すること
単に土台となる歯を削れば良い訳ではありません。
また、支台歯形成は支台築造後もしくは生活歯に行うことができます。
支台歯形成のクリアランス確認方法
次に、支台歯形成後のクリアランス確認方法は主に以下の3つに分けられます。
- プレップシュアⅡ
- 咬合紙
- 咬合器
それぞれ、解説していきましょう。
プレップシュアⅡの特徴とクリアランス確認方法
プレップシュアⅡは株式会社モリムラの形成量確認用インスツルメントです。
咬合面、頬側面、舌側面、歯頚部の各部位の正確なクリアランスを何度も確認しながら、支台歯形成をすることができます。
1.0mmイエロー、1.5mmレッド、2.0mmブルーの3本セットなので、各部位に合わせて使い分けが可能です。
さらに、チップ部分が近心用、遠心用に分けられています。
クリアランスを確認する際は、支台歯形成途中に、プレップシュアⅡの近心用チップを支台歯のクリアランスに挿入して、近心面から咬合面に滑らすように動かします。遠心用チップも同様です。
作業中にチップが押される、咬合ができない場合はクリアランスが不適切なため支台歯形成を続行します。クリアランスが適切になるまで、何度も確認してください。
咬合紙の特徴とクリアランスの確認方法
咬合紙には10μmから100μmくらいまでの厚さを持った咬合紙があるため、厚さに注意して使用しましょう。
咬合チェックをする際に、噛み合わせが強いところは咬合紙の色が転写します。赤色はカチカチ(中心咬合位)、青色はギリギリ(偏心位)と色により使い分けが可能です。
クリアランスを確認する場合は、支台歯形成途中に、咬合紙をカチカチ、ギリギリと噛んでもらい色がついた部分を中心に形成を続行します。
出来ればチェアを起こした状態の自然頭位で行ってください。
咬合器の特徴とクリアランスの確認方法
支台歯形成後の最終チェックとして、咬合器にて正しい噛み合わせやクリアランスを確認してください。
せっかく支台歯形成時にクリアランスが正しくても咬合器上で再現出来ていなければ意味がありません。
まず、咬合器に正しい噛み合わせ、クリアランスでセッティングするためにも、印象採得が重要となります。印象材は、シリコンでも、アルギン寒天連合でも構いません。
印象採得時に出血が多い場合は、止血剤もしくは支台歯形成とは別日に印象採得しましょう。
支台歯が2歯以上(ブリッジなど)片側にある場合は、全顎の印象採得をすることで、クリアランスや咬合位がずれるのを防ぎます。
印象採得後は気泡を入れないように石膏を注いで下さい。
模型の状態になってから、クリアランスのチェックに加え、正しい咬合位置、マージン部、支台歯の形態の最終チェック、石膏面の面荒れ、気泡や突起がないかなどのチェックを行います。
支台歯形成の5つのポイント
支台歯形成時に注意するべき点と割れないポイントを解説します。
3面形成
精密性を高め、補綴物との適合を良くするため、機能側では3面、非機能側では2面が基本となっています。
リテンションは第1面で3.5mm以上の高さが必要
支台歯が、クラウンなどの補綴物を維持する力を発揮させるため、第1面に立ち上がりをつけてください。
フィニッシュラインはシャンファーかアクセンチュエイテッド シャンファー
基本的には、機能側ではアクセンチュエイテッド シャンファー、非機能側ではシャンファー形態にします。
補綴物によって形態を変えるのであれば、メタルクラウンなら「シャンファー」、メタルセラミッククラウンなら「スロープドショルダー」、オールセラミッククラウンなら「ラウンデッドショルダー」が一般的です。
ナイフエッジ、ショルダー、ジャンピングマージン、アンダーカットなどの形態だと、補綴物の適合性が悪い、破折などが起こります。
もちろん、補綴物の種類などによっても形態を変えることも破折などの面において重要です。
スムーズなフィニッシュライン
補綴物合着後に、咬合力に耐え切れず支台歯自体が破折する可能性があります。天然歯同様の滑らかなフィニッシュラインを目指しましょう。
隅角部は丸める
補綴物の隅角部の内面が丸みを帯びた状態にトリミング形成されているため、適合性を上げるために支台歯の隅角部も丸めてください。
歯の隅角は角張りを持たせないようにしましょう。
生活歯と失活歯の支台歯形成の違い
同じ支台歯形成でも生活歯と失活歯で何が違うのかを解説します。
生活歯の支台歯形成の手順
虫歯など、何らか理由で歯が欠損して補綴物で補う場合に支台歯形成を行います。
- 舌側、唇側のマージン形成
- 隣接開放
- 切端、舌面、唇面のグルーブ形成
- 第1面形成
- 第2面形成
- 切端切除
- 第3面形成
- 隣接部形成
- 舌側面形成
- 唇側マージン仕上げ
- 隅角の仕上げ
露髄に恐れてマージン部まで形成が甘くなる傾向にあるため注意して切削しましょう。咬合面の形成は露髄の恐れがあるため慎重に行ってください。
生活歯は、神経がある歯なので支台歯形成もより慎重に露髄をしないように行う必要があります。
同じ支台歯形成でも、トラブルを回避するために必ず、失活歯なのか生活歯かを治療前にレントゲンやカルテを見て確認しましょう。
失活歯の支台歯形成の手順
支台築造後に支台歯形成を行う場合があります。
- 舌側、唇側のマージン形成
- 隣接開放
- 切端、舌面、唇面のグルーブ形成
- 第1面形成
- 第2面形成
- 切端切除
- 第3面形成
- 隣接部形成
- 舌側面形成
- 唇側マージン仕上げ
- 隅角の仕上げ
手順は、生活歯と同じです。
生活歯と比べて露髄などの面でシビアになる必要はありません。
失活歯は神経のない歯(支台歯形成においては、支台築造した歯)を指します。
支台築造後の場合は、基本的には治療期間を開けないで同日に支台歯形成を行いますので、治療時間が長くなる可能性を患者さんに伝えましょう。
打診痛がないかの最終チェックも忘れないでください。
まとめ:支台歯形成のクリアランス確保は確認方法が重要
支台歯形成におけるクリアランスの確保は「目で確認」ではなく、専用器具や咬合紙、咬合器と満足いく方法を見つけることがよりよい支台歯形成ができる近道です。
支台歯形成において、手順はもちろん5つのポイントをしっかり押さえて治療にあたりましょう。
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