歯科医院の数が増え「開業すれば、患者は来る」という時代はとっくに終わりました。
各地域で数多くの歯科医院がひしめき合う中、どのように歯科医院として生き残っていくかというのは重要なテーマです。
実際に今、歯科医院として活躍している医院は生き残るためにどのような工夫をしているのでしょうか。
そこで今回、実際にかつて歯科医院を経営していらっしゃった歯科医の山本先生と、歯科衛生士の原田さん(仮名)に「どんな歯科医院が成功するのか?」というテーマでインタビューを行いました。
これから歯科を開業しようとしている方や、経営がなかなかうまくいかずに悩んでいる先生は参考にしてみてください。
歯科の経営が難しい環境に変化している
――歯科医院の数が増え、歯科経営が厳しい時代になりましたね。
人口は減っているのに、歯医者の数はどんどん増えていますからね。厳しいですよ。歯科の患者も減っています。
――人口が減っていること以外にも、歯科の患者が減っている要因はあるんでしょうか?
社会保険の制度変更の影響で1割だった負担額が3割になり、後期高齢者の負担額も1割から2割になりましたしね。
あとは皆さんの虫歯への予防意識が高まっていることも原因にあるかと思います。
――おお、予防意識は年々高まっているんですね。
今は小学校や中学校に歯科検診に行っても、虫歯の子が少なくなりましたよ。以前と比べると。
小学校の学校歯科医がブラッシング指導なんかをするので、その成果が出ていると思います。
――なるほど。人口が減っているうえに、患者さんも少ない。そして、歯医者の数は増えていっている、と。
何か他に負けない、特化した特徴のある歯医者しか生き残れない時代なのは、間違いないでしょう。
失敗しやすい歯科医とは?
――こんな歯科医だと失敗してしまう!というものはありますか?
患者さんを大事にする姿勢がない人じゃないですかね。
――「患者さんを大事にする」というのは、具体的にどういうことですか?
患者さんの気持ちに寄り添うということです。ただ、治療だけをしていればいいわけではないんですよね。
たしかに患者さんとのコミュニケーションがうまくできることは、私たち歯科衛生士にとっても重要だと思います。
――患者さんとのコミュニケーションとは、具体的にお聞かせいただければ。
患者さんの歯ブラシ選びなどの些細な質問に親身に答えたり、患者さんの気持ちを配慮したお声掛けなどですね。
そういう姿勢がなってないと、すぐに地域に口コミで「嫌な歯医者」だと広まってしまいますよ。
――たしかに…。そういう歯医者はありますね。経営に関してはどうでしょうか?
どんぶり勘定の歯医者はなくなるでしょうね。経営に対する意識が低い人は難しいと思います。
――経営に疎い歯科医という人もたくさんいると思うんですけど、それでは厳しいんですね…。
いえ、疎いのはいいんですよ。経営をもっとよくしようという意識があるか、関心があるかというのが大事なんです。そこに関心がない人もいるので。
――なるほど。経営に疎い歯科医はどうすればよいでしょうか?
顧問税理士やコンサルのアドバイスを受け入れる姿勢を持ち、アドバイスの内容を理解できるようになることです。とくに顧問税理士とのコミュニケーションは大切ですよ。
どんな歯科医が成功しやすいのか?
――逆にこんな歯科医は成功する!というのはありますか?
患者さんを大事にするというのが、第一条件になるとは思います。そして、やっぱり先生のキャラクターは重要ですね。親しみやすいキャラクターで、患者さんに信頼される歯科医が成功すると思います。
――先生の「キャラクター」ですか。歯科衛生士の原田さんの立場から見ても、先生の「キャラクター」の重要性は感じますか?
はい、かなり重要だと思います。院長先生の人柄は歯科医院全体のムードをつくるとは思いますね。スタッフとの関係性も良好な院長先生だと、医院全体が暖かいムードになります。
スタッフと院長の関係性は患者さんも感じると思います。見てないようで見ていますからね。すぐ口コミになって広がりますし。
――嫌な空気がすぐに地域で口コミになるのは怖いですね。
まあ、逆によい口コミもありますからね。
――どうすれば地域によい口コミが流れ始めるのでしょうか。
先生を筆頭に医院全体で歯科医院の雰囲気を良くして、患者さんからの信頼を高めていくしかありません。
本当にそうですよね。先生のキャラクターがよくても、スタッフが潰してしまうこともあるので…。注射一つにしても、気配りしながら丁寧にやるように気をつけた方がいいですね。
そういう些細なところから地域の評価につながっていくんですよ。病院はサービス業ではないという人はいますけど、これからは「おもてなしの心」も大切になってくると思います。腕だけじゃダメなんですよね。
成功するための開業準備はどうすればよいのか?
――開業準備についてもお尋ねしたいと思います。開業資金はどれぐらい必要だと思いますか?
3000-5000万くらいですかね。できれば、5000万円以上はほしいですね。
――やはりそれくらいは必要ですか。
最初の運転資金だけでも500万円はかかるし、レントゲンとかもろもろの機材を考えると、どんどんお金はかかるからね。
――立地はどんな所がいいとかって、ありますか?
まあ、みんな駅の近くが良いとは言いますね。ただ、駅の近くでもいろいろあって。駅の右がいいか、前がいいか、左がいいか。人の流れを見て判断しないと、何とも言えませんね。
――やはり駅近物件がいいんですね…。
いや、まあ先生の好みだとは思いますよ。どの地域だったら、想いをもってやれるかという……最終的にはそこじゃないですかね。
歯科医が地域に根付くために必要なこととは?
――歯科が地域に根付くためにはどんなことをするのが良いですか?
歯科医師会に入っていると、地域のイベントに参加できるのでいいんじゃないかと思います。
――やはり地域のイベントは大切ですか。
大事だと思います。地域の運動会に参加して、地域の方々と交流したり、食に興味のある人を呼んで、食育セミナーを開いたり…。まあ、いろいろやり方はあると思いますが。地域に貢献することで、地域の認知度を上げるという考え方です。
――地域の認知度を上げるというと、看板などをイメージしますが…。
看板は思ったより効果を感じることはありませんね。置くのであれば、設置場所がかなり大切になってくるかと思います。しっかり意図を持った広告をするのが大切です。
――地域の認知度を上げるのも簡単ではないんですね…。
私たち歯科衛生士が患者さんにやさしく接して、患者さんと仲良くなると言った地道な行動も地域に根付くためには重要かなと思いますね。
――歯科が成功するために、地域の方との関係性が重要だということがよくわかりました。
歯科医は地域にいかに貢献するか、という部分がカギだと思います。
そうですね。私も仕事をしていて、地域とのつながりの重要性を実感することが多いので、それは間違いないと思います。
――なるほど。本日は貴重なお話をありがとうございました!
歯科医院が成功するためには地域からの信頼が必須
歯科医院が成功するためには、経営への関心という面だけでなく、患者さんや地域全体に寄り添う姿勢が大事ということがよくわかりました。
日々の診療で患者さんに暖かく接して尽くすことで、患者さんとの信頼関係を気づいていくことが大切なんですね。
さらに地域活動に積極的に参加することで、地域に受け入れられて親近感を持ってくれる方を増やすことが重要となるようです。
もう「技術があれば自ずと患者は集まる」という時代ではありません。
これからは地域から愛される歯科医院になるにはどうすればいいか?ということについて、深く考えてみるとよいかもしれませんね。
プロフィール
山本顕一
歯科医師、総合美容テロメア協会代表理事。2代目の歯科医として、地域に目指した歯科医院をかつて経営。現在は医療と美容をコラボさせた新規ビジネスを準備中。
原田優子(仮名)
歯科衛生士。業界歴15年のベテラン。歯科医院での勤務の他、歯科業界内大手メーカーにて衛生士勤務も経験。
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