口腔内スキャナーの性能は日々進化しており、臨床現場で利用される機会も増加傾向にあります。
欧米を中心に歯科医療で口腔内スキャナーは普及しているのですが、まだまだ日本では少ないのが現状です。
現在ではポータブル化が進んだり、ヘッドが小さくなったりと、どんどんユーザビリティも向上しています。
この記事では歯科における口腔内スキャナー導入のメリットとデメリット、また、人気の口腔内スキャナーを3種類ご紹介します。
口腔内スキャナーを利用するメリットとは?
口腔内スキャナーを利用するメリットは主に以下の5点です。
印象や石膏のロスがない
これまで印象をとる際には、アルギン酸やシリコン印象材を使い、石膏を流し込んで模型を作っていました。
印象をとるための印象材や、模型を送るための宅急便などを使用することがなくなり、コストカットにつながるのです。
作業時間が短縮できる
印象をとるために、これまで20分ほどの時間がかかっていました。
しかし、口腔内スキャナーを使用することで、印象をとる時間が3分ほどで終わるようになったのです。
作業時間が短縮されたことで、患者さんの負担が軽減することはもちろん、診察時間を患者さんのために有効に使えるようになります。
人的ミスの心配がない
これまでの方法では、印象材や石膏の使用といった作業を人間が行っていました。そのため、どうしても人的ミスが起こる心配があったのです。
しかし、口腔内スキャナーを使用する場合は人的作業がないので、そのようなミスが起こる心配はありません。
歯列データがデジタルで管理しやすい
印象材で歯型を取った場合は、印象材の保管場所が必要となります。
しかし、口腔内スキャナーで歯型をとった場合はデータなので、物理的に場所を奪うことはなく、管理がしやすいのです。
また、印象材を破損してしまうようなリスクもありません。デジタルデータなので、共有しやすいという利点もあります。
患者さんのストレスが軽い
印象をとる作業は時間はかかる上に、印象材を口に入れなければならず、患者さんにとっては面倒な作業で負担のかかるものでした。
しかし、口腔内スキャナーの場合は印象材を口に入れる必要がなく、コンパクトなヘッドの口腔内スキャナーで口の中のスキャンをすれば完了となります。
患者さんにとっても手軽に歯列データを提供できるので、負担が軽くなるのがメリットです。
口腔内スキャナーを利用するデメリットは?
口腔内スキャナーにはデメリットは、主に以下の2点です。
機械が高額である
口腔内スキャナーの価格は、500万円~1000万円とまだまだ高額です。
したがって、投資対効果に見合わないケースが生じる可能性もあります。
口腔内スキャナーを導入時は投資対効果に見合うかどうか、検討が必要です。
発注できる歯科技工所が少ない
まだ日本で導入している歯科が少ないこともあり、まだまだデジタルオーダーに対応している歯科技工所の数が少ないのもデメリットとして挙げられます。
ただし、デジタルオーダーは今後普及していくと考えられますので、発注できる歯科技工所も増えていくのは間違いないでしょう。
口腔内スキャナーのデメリットは、まだ普及が少ないことによるものが多く、これから技術がさらに発展し、普及が進んでいくことで解決できるものが多くなっています。
歯科からの評価が高い!3つの人気口腔内スキャナー
それでは口腔内スキャナーの中で、とくにおすすめのものをご紹介します。
CEREC(Sirona社)
Sirona社の「CEREC」はパウダーフリー&フルカラーのスキャニングシステムとして、世界ナンバーワンシェアを誇っている口腔内スキャナーです。日本国内でも圧倒的にシェアを集めています。
ツインバー加工システムにより同時に歯の両面を加工することができるため、インレー約5分、クラウン約10分という、短い加工時間を実現。
1日で自費補綴治療を終了することができるようになりました。
CERECの特徴①取得データがフルカラーの3D画像で表示される
最新機種「CEREC Omnicam」を使用すると、パウダーなしでスキャンすることができます。
スキャンしてデータを取得すると、スキャンデータがフルカラーの3D画像で表示されるのが大きな特徴です。
CERECの特徴②幅広い症例に対応
CERECは幅広い症例に対応している点も魅力です。
スマイルデザインなどといったツールが充実しているため、前歯部の術後完成状態をシミュレートできます。
さらに、多数歯修復やインプラント補綴など幅広い症例に対応しているのです。
CERECの特徴③患者から指名される
世界シェア1位の「CEREC」は患者さんにとっても有名で、「CERECはよい機械だ」ということが知れ渡っています。
「CERECを使うと白い歯に繋がる」「1Day治療」というイメージが患者さんの中にも浸透し始めているのです。
そのため「セレックにして」とセレックを使った治療を指名する患者さんもいるほどで、知名度の高さから患者さんを安心させることができます。
Trios(3shape社)
3shape社の「Trios」はパウダーフリーで本体が軽く、ヘッド部分がコンパクトです。
3Dのデジタル印象が短時間で正確にとれるので、ドクターにとっても取り扱いやすい機種となっています。
近年の販売強化により、じわじわとドクターへの認知度は高まってきていますが、まだ市場シェアを固めるには至っていません。
Triosの特徴①拡張性が高いシステム
Triosは印象データを取得した後の設計から削りだしまで、様々な会社の機種を組み合わせて使えるオープンシステムの機械で、拡張性に優れています。
全ての工程でシロナ社の純正機器を購入しないと使用できない「CEREC」と比較するととても便利です。
Triosの特徴②スピードの速さと精度の高さの両立
片顎で25秒、全顎で40秒という、超高速での撮影ができます。
撮影した画像は鮮明で高画質であり、撮影エラーを起こすようなこともありません。
患者の負担が少ないという点も魅力です。
i Tero(アライン・テクノロジー社)
インビザライン(着脱式の透明なマウスピースを用いて歯並びを矯正するもの)用の口腔内スキャナーの中で人気なのは、アライン・テクノロジー社のi Teroです。(現在補綴用ソフトが導入されています。)
人気の秘密はスピードと印象の品質にあります。
i Teroの特徴①適合が良好
i Teroを使用すると、とても精密な歯型がとれるようになります。歯列としっかり適合する点が大きなメリットです。
口腔内での調整に時間をとられません。
精密なマウスピースが作成でき、変形することもありません。歯型のとり直しが必要となるケースもほぼないでしょう。
i Teroの特徴②スキャンのスピードが速い
i Teroのスキャニング結果は、とったその場で確認できます。
これまで、マウスピースを製造するまで1か月ほどかかっていましたが、2週間程度でマウスピース装置が完成するようになったのです。
i Teroの特徴③撮影が広範囲で誤差が少ない
i Teroは他メーカーよりヘッドが大きいという特徴があります。
ヘッドが大きいと使いづらそうに思うかもしれませんが、ヘッドが大きいことによって広範囲に撮影ができ、誤差が少ないという利点もあるのです。
口腔内スキャナー導入のポイント
使い始めるまでにどれくらいの期間がかかるのか
口腔内スキャナーは高額商品であり、購入してすぐに納品されるということはありませんが、発注から導入まで2週間程度で可能です。
営業担当と納期の相談をしながら、いつ頃納品してもらいたいのか希望を伝え、対応してもらうようにしましょう。
他に必要な周辺機器はあるのか
スキャナーの使用に必要な周辺機器はパソコンです。
画像処理に対応できるスペックのものを準備しましょう。
以下のスペックがあると安心なので、参考にしてください。
CPU:Intel Core i7以上
メモリ:16GB以上
基本的にはそれ以外の周辺機器は必要ありません。
口腔内スキャナーの設置スペースは?
設置スペースは機械によって様々です。
基本的には100㎝ほどの高さと50センチほどの幅、奥行きで30kg以上の重さのある大きな機械となります。
しかし、現在ではモバイル型のものもあり、横35㎝、縦25cm、厚さ15㎝ほどで、重さが3㎏というものもあるのです。モバイル型は持ち運びが非常に楽で便利です。
まとめ:口腔内スキャナーで補綴をより効率的に
口腔内スキャナーは導入することで作業の効率化を図ることができるため、これからさらに普及することが考えられます。
口腔内スキャナーが保険適用された時にはそれが契機となり、一気に広がるのが見込めるのです。
今後は現在より、口腔内スキャナーに対応した歯科技工所も増えていくことでしょう。
ぜひ投資対効果の検討をしてみて、問題がないようであれば導入を考えてみてくださいね。
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