2023年9月発行 No.130 / 記事執筆:宮岡
「お客さま第一」研修
弊社では4年前から外部講師を招いて、年4回「お客さま第一」の研修をおこなっています。
その中で今季から取り組んでいる「クレーム対応」の研修内容を共有いたします。
第1回目の研修内容「お客さま第一の本質と鍛え方」の記事はこちら
クレーム対応についての考え方
クレームについての考え方の6ヶ条
- 問題発見力(クレームの感度)を高める
小さいことをいかに感じ取って気付けるか
油断してはならない
- クレームは何にさて於いても即時に対応する
自分のことを大事にされてないのではないかと思われしまう
態度として出やすい部分なので注意
- クレームについて責任が問われるのはクレーム対応の方針に従わなかった場合だけ
方針に従った結果のクレームは一切責任を問わない
責任を問うとクレームの報告が一切あがらなくなる
- クレームが発生したら即時に上司に報告する
クレームには組織で対応する
業務知識の経験が豊富で解決の糸口となる
- クレームが発生してお客さまに非があっても、決してお客さまを非難してはならない
お客さまが勘違いしているだけかもしれない
行き違いがあったのかもしれない
- どんなに頑張ってもクレームは発生する。クレームがないことを恐れたほうが良い
客からクレームを言われていないだけかもしれない
クレームの報告があがってきていないだけかもしれない
問題発見力を高める
問題発見力 ~本当の問題は何か?~
解決策に飛びついていないか?
クレームがあった際に、できるだけ早く解決したいからといって解決策から考えるのはよくありません。
一般的にクレームは、お客さまの期待を大きく下回った時に不満が生じて発生します。そのため「お客さまの気持ちを理解する」ことが大切です。お客さまはどんなことでに嫌な思いになるのか、何が問題なのかなどを考える必要があります。また、クレームを多角的にとらえて、本当の問題はどこにあるのかを見つけなければなりません。
「考える」とはどういう事か?
では、「考える」とはどういうことかというと、インプットした情報を「整理」して「創造」したものを、価値あるものとしてアウトプットすることです。
ここでいう「整理」「創造」は次のものが当てはまります。
整理 | 創造 |
---|---|
分ける | 組み合わせる |
比較する | 例える |
視点を変える | 予測する |
疑問視する | 視点を変える |
疑問視する |
考えるうえでの一番の基本は「分ける」ことで、「全体像をイメージして分ける」ことがポイントです。
そして、誰の問題か?何が問題か?を考えて、そのなかで一番大きな問題は何かを考えます。
問題発見力のコツ ~分ける~
1つ例題があるので考えてみてください。
この場合でも、解決策から考えるのはよくありません。ただ解決策を羅列しただけではどれが最善策かわからないからです。本当の問題は何かを考えて、全体像をイメージして、情報を“整理して分ける”ことからはじめます。
■ では情報を整理してみましょう。
- 情報1 先生1名、歯科衛生士1名、受付スタッフ1名で診療
- 情報2 待ち時間が長くて子供が駄々こねる
- 情報3 保護者からクレーム多発
- 情報4 クレーム対応で受付スタッフが困っている
■ 整理した情報から誰の何が問題なのかを考えてみましょう。
- 受付スタッフ
クレーム対応が大変
モチベーションが下がる
- 子供
待ち時間が退屈
歯医者嫌いになるかもしれない
- 保護者
子供をあやすのが大変
- 院長先生
スタッフが辞めないか心配
評判で患者さんが減らないか心配
■ 最も大きな問題は何かを考えましょう。
おそらく、「評判で患者さんが減らないか心配」ではないでしょうか。SNSや口コミで評判が広がって、医院の売上が減ってしまったら大問題です。このような人はいないと思いますが、「クレーム対応で受付スタッフが困っているからクレーム窓口を設ける」という対策のみでは、本当の解決にはなりません。
■ 大きな問題を発見したら解決策を創造します。
ここでの「創造」とは、予測する、疑問視する、視点を変えるなどになります。そうすると、次のような解決案が考えられると思います。
- 予約時間通りに診療できるように、余裕をもって診療時間をとる
- 来院してからの待ち時間が問題とすると、WEBにリアルタイムの予想待ち時間を表示して丁度よい時間に来てもらう
- 視点を変えて、待ち時間は変わらないけど、その時間が長い(退屈)と感じさせないように、待合室に子供の好きなアニメを流したり、遊具をおいて楽しんでもらう
一番の大きな問題は「評判で患者さんが減らないか心配」でした。そして、SNSの投稿や口コミをするのは、駄々をこねてる子供ではなくて保護者です。悪い評判によって売上が落ちないようにしないといけませんので、待ち時間の解決とともに保護者へのフォローも必要となります。
このように問題解決には『整理(問題発見)×創造(問題解決)』で考えることで、本当の問題が何なのかが判りやすくなります。
クレームがないことを恐れたほうが良い
苦情を言うのはわずか4%だけ
現在クレームが少なくても安心はできません。ある調査では、商品を購入したりサービスを受けた直後に40%の人が不満を抱いているが、そのうち苦情を言うのはわずか4%だけと言われています。これは、1000人のお客さまがいて、そのうち400人の人が不満を持っていたとしても、クレームを言う人は16人だけしかいない計算です。つまり1人のクレームの後ろには、25人のクレーム予備軍がいることになります。
「 Silent customer is silent gone 」
不満を抱えながらクレームを言わないクレーム予備軍は、静かに去ってしまいます。クレームが1件もなくても、気付かないうちに不満を持っていたお客さまが離れてしまっている可能性があります。感度を高めて、わずかな予兆でも見逃さないようにしましょう。
クレーム報告があがってきていないだけ
クレームが少ないのは、ただクレームの報告があがってきてないだけかもしれません。クレームをおこした人に責任を問うたり、「クレームゼロ運動」などの取組みをおこなうと、特に報告があがらなくなってしまうので注意が必要です。
また、クレーム対応のことを「クレーム処理」と言ってないでしょうか?クレームに対しては誠意をもって対応しなければいけません。「処理」とは、物事を取りさばいて始末をつけること。このような言葉を使っていたら、クレームに対する意識が低くなてしまいます。
社員研修 講師
エグゼクティブコンサルタント
金入 常郎 氏