歯科におけるブリッジのポンティック形態には数種類ありますが、どう選べば良いのか理解できていますか?
ブリッジのポンティック形態にはいくつかの種類があり、審美性が求められる部位か否か、欠損部顎堤の形態や患者さんの清掃性の程度などによって使い分ける必要があるのです。
この記事では、患者さんに合わせたポンティック形態をどのように選択するのか、ブリッジの場合の歯式の書き方やセメント除去の方法について、歯科医院様に向けて解説させていただきます。
ブリッジのポンティックとは
ブリッジのポンティックとは、欠損部分を補うために支台装置(両脇の土台となっている歯)に連結される人工歯のことです。
ポンティックには、咀嚼や発音などの機能性と審美性の回復を果たす役割があります。
保険適応の場合、金銀パラジウム合金を使用し、そこにレジン前装を行う場合もあります。
ポンティックの頬側唇側をレジン前装したものは、レジン前装金属ポンティックと呼びます。
大臼歯にレジン前装ポンティックを使用する場合は、咬合面は金属で作製し、頬側にレジン前装を施すのです。
ブリッジのポンティック形態の分類
ポンティック形態は大きく分けると、完全自浄型、半自浄型、非自浄型の3つです。
名前のとおり自浄性が異なるので、それぞれの特徴を理解し適したものを選択しなければなりません。
完全自浄型
離底型
完全に基底面が顎堤から離れた形態で自浄性清掃性に優れます。審美性や発音に関係のない領域に用いられ、下顎大臼歯など見えにくいところに適用となります。
半自浄型
船底型
基底面が顎堤に点状または線上に接するもので、主に下顎臼歯に適用となります。
偏側型
基底面が唇頬側で線状に接するもので、全顎に適応できます。審美性が良いのも特徴です。
リッジラップ型
基底面が唇頬側に歯槽頂まで接するもので、全顎に適応できます。現在よく用いられている形態です。審美性にも優れています。
非自浄型
鞍状型
基底面が鞍状に顎堤の唇頬側から舌側まで全体に接するもので、自浄性は悪いです。可撤性ブリッジに適応となるため、あまり使われません。
有床型
基底面に付与された床が欠損部顎堤を広く覆い、形態を回復できます。自浄性が悪いので可撤性ブリッジの適応です。
オベイド型
基底面が顎堤に形成された陥没部に入り、歯根部から立ち上がったような自然な形態を作ることができます。
審美性に優れますが、自浄性は悪いため、歯間ブラシなど用いてしっかり清掃できる患者さんへ使用する方が良いでしょう。
主に前歯部に適応となります。顎堤に陥没部を形成するために歯肉に麻酔し、歯肉を若干削り、くぼみを人工的に作る必要があるでしょう。
くぼみの上に仮歯でできた卵形のポンティックを歯肉に当たるように設置します。
数週間後に仮歯を外すと歯肉の陥没部が出来上がっているはずです。印象採得を行い最終補綴装置を作製します。
外科処置が必要で、時間は少々かかりますが、審美性に優れたブリッジを作製することができるポンティック形態です。
ブリッジのポンティックについて歯式の書き方
ブリッジのポンティックについては、例として右下6番(第一大臼歯)欠損で右下5番(第二小臼歯)と7番(第二大臼歯)を支台歯とするブリッジの場合、⑦6⑤┐と記述します。
支台歯に○をつけることとなり、○の付いた支台歯にはさまれた数字が、ポンティック部(欠損歯部)を意味するのです。
右下7番欠損における延長ブリッジの場合には、7⑥⑤┐という記述になります。
ブリッジのポンティック部分のセメント除去の方法
ブリッジのポンティック基底面や鼓形空隙に付着した余剰セメントは、完全に除去してしまわなければなりません。
セメントが残留していると、歯石がセメント周囲に付着したり歯周炎が起こったりするためです。
ブリッジの部位だけでなく、隣在歯や対合歯のセメントも忘れずにチェックしましょう。
ポンティック部分のセメントを除去する方法
ポンティック基底面にワセリンを塗る
ポンティック基底面にワセリンを塗る場合は、ワセリンが支台歯や補綴物の内面などに付着するとセメントでの接着を阻害してしまうので、セメントが他の部位に付着しないように気をつける必要があります。
スーパーフロスを用いる
スーパーフロスとは、普通のフロスに細長いスポンジのようなものが付いたものです。このスポンジにより、ポンティック部分のセメントを取り除くことができます。
確実にセメントを除去するために、スーパーフロスは必ず使用するようにしましょう。鼓形空隙には歯間ブラシも使用できます。
短針やスケーラーなどで取り除く
短針やスケーラーなどのツールを用いて手でセメントを除去します。超音波スケーラーは、接着したブリッジが外れてしまう可能性があるので使用しません。
ポンティック部分のセメントを除去しやすくするために
タイマーをセットして、時間を計る
セメントがある程度固まった段階でセメントを除去しなければなりませんので、タイマーなどをセットしてタイミングを逃さないようにしましょう。
完全硬化してしまうと、セメントの除去は難しくなってしまいます。
セメントの除去を行いやすいセメントを用いる
ポンティック基底面はそもそもセメントを除去しづらいので、硬化後も除去しやすいセメント(光硬化型レジン系セメントなど)を用いることも有効な方法です。
マイクロスコープを用いる
セメント除去を行う際は、顕微鏡(マイクロスコープ)を用いるとより細かいところまで見ることができるので、確実な除去へと繋がります。
それぞれのポンティック形態を理解しておこう
教科書的な知識としてもそれぞれのポンティッブリッジのポンティック形態について、解説してきました。唇側や頬側面には自然歯と同じような形態を与え、舌側面は自浄作用を備えたプラークが沈着しないような傾斜した外形が与えられます。
ただポンティックが歯槽粘膜の唇(頬)面側だけで接触するような設計をすると、食片が圧入される傾向があります。そのため今日では、舌側部により豊隆を持たせてS字状カーブを与え、歯槽頂まで接触させたリッジラップ型の中でも、モディファイドリッジラップ型のポンティックが理想的だとされています。それぞれのポンティック形態を理解しておくようにしましょう。
ブリッジの歯式の書き方については、技工指示書などに書くことも多いので間違えないように覚えておいてください。
ブリッジ装着時の余剰セメントの除去は難しいですが、セメントの残留により患者さんに違和感や歯肉炎を引き起こしてしまうので、念入りに除去することが大切です。この記事を参考にマスターしてくださいね。
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