パラファンクションを考慮したシークエンシャル咬合理論
シークエンシャル咬合理論とは、1981年に元ウィーン大学歯学部学長ルドルフ・スラヴィチェック先生が提唱された、単に咀嚼回復をするだけの咬合論ではなく、歯ぎしりやくいしばりなどのブラキシズムや口唇をかむくせなど、「パラファンクション」も考慮して咬合理論です。
ルドルフ・スラヴィチェック先生は、「咬合治療の目的は生理的なブラキシズムがおこなえるようにすること。それにより、ストレス性疾患、ストレス関連疾患を軽減・予防できるであろう」と言っています。
「シークエンシャル」とは「連続する」という意味で、第一大臼歯の噛み合わせから前方へ順次に側方運動で誘導させ、最後に犬歯誘導させる咬合を作る事を目的にした「順次誘導咬合」です。
最初にできる上下第一大臼歯の咬合から、成長発育の過程で自然に獲得した咬合誘導路と考えています。
シークエンシャル咬合理論は、正常骨格である1級アングルに対する理想咬合を追い求めた機械的咬合論であるアメリカの「ナソロジー」に対して、オーストリアで提唱されたため「オーストリアンナソロジー」とも呼ばれるます。
ナソロジー | シークエンシャル咬合理論 (オーストリアン・ナソロジー) | |
---|---|---|
提唱年 | 1920年 | 1981年 |
提唱者 | マクカラム | スラヴィチェック |
機械的咬合論 | 生理学的咬合論 |
シークエンシャル咬合理論の活用方法
「シークエンシャル咬合理論」の理論を理解することで、咬合のメカニズムを知ることができ、患者様一人ひとりに合った最適な治療を行えるようになります。
顎関節機能診断
セファロ分析とキャディアックスを用いて、患者さんの持つ個々の骨格形態を分析し、咬合平面・下顎位の決定をします。
セファロ分析
頭部X線写真をトレースして計測点と計測平面を設定します。上下顎骨の前後的な位置関係や前歯部の歯軸のチェック、第一大臼歯の咬合関係をはじめとする顎顔面の収集することができます。セファロ分析を行うことにより、適切な治療計画を立てることも可能となります。
キャディアックス(CADIAX)
キャディアックスでは、3次元的に顎関節機能診断が可能です。下顎位をリアルタイムで表示することができ、キャディアックス下顎運動測定装置により得られたデータをコンピューターにより解析し、記録した下顎運動に基づいて咬合器の調節を精密にすることができます。
口腔内の再構築
口腔内を再構築するための必要な設定・手順は次のとおりです。
- 歯の形態
- 歯列とセントリックラインの形態
・バッシブセントリック
上顎のセントリックラインやセントリックストップを構成する接触点
・エステティックファンクショナルライン
上顎の歯の切端および頬側咬頭の連続するライン
- 下顎の誘導路
・バッシブセントリックとエステティックファンクショナルラインの間に存在する
- 下顎の運動
・前進後退運動
・後方運動
・右側方運動
・左側方運動
- 誘導路の計測およびワックスアップデータの計測
・アキシオグラフによる下顎等の運動路の測定
・アクティブセントリックポントの空間的位置の測定
・前歯誘導路の決定
・インサイザル・テーブルの傾斜角の測定
・犬歯、小臼歯、大臼歯の各誘導路の決定
- ワックスアップ
シークエンシャル咬合理論を学ぶには
咬合理論の権威であるウィーン大学教授のルドルフ・スラビチェック博士に師事し、難関とされている同大学で認定技工士資格を取得されている榊原デンタルラボ代表の榊原功二先生が、定期的にシークエンシャルワックスアップの講習を行っています。
ベースとなる咬合彎曲
スピーの彎曲
スピーの彎曲とは1890年にドイツの解剖学者Grefvon Speeが発見した、下顎の切歯切縁、犬歯尖頭および臼歯部の頬側咬頭頂を結び、これを矢状面に投影したときあらわれる中心を上方に持つ円弧。
クラウンブリッジによる全歯列の再構成の際の咬合彎曲や、総義歯における矢状および側方調節彎曲の決定の際に参考とされます。
ウィルソンの彎曲
ウィルソンの彎曲は天然歯列を前頭面に投影した場合、下顎臼歯における左右同名歯の各咬頭頂は、通常下方に向かって凸のカーブ上にあり、臼歯の位置により異なった弧を描きます。
歯牙解剖学的には、舌側咬頭が頬側咬頭より高い下顎大臼歯が、顎骨に植立つした状態では逆に頬側咬頭の方が舌側咬頭よりも高くなってウィルソンの彎曲を示すのは、歯が舌側傾斜しているためです。
モンソンの球面説
モンソンの球面説とは1920年にMonsonが提唱した、スピーの彎曲を前後左右すべての運動にまで拡大し、左右顆頭、下顎切歯点を含む、いわゆる一辺10cmのボンウィル三角を含む球面です。
モンソンは歯列より約4インチの高さで、上顎歯の中心窩と下顎歯の頬側咬頭を通る中心から向けられた咬合力は全ての歯の長軸と歯根膜支持にとって最も好ましいことを示しています。
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