2017年6月発行
産業界では機械化、ロボット化が当たり前になっています。歯科医療においても、テクノロジーの進化によりCAD/CAMをはじめ機械化の波が確実に押し寄せています。昨今のデンタルショーの大手メーカーブースでは、口腔内スキャナーの展示が目立つので、次の自動化・機械化は光学印象による“アナログ印象からデジタル印象”かもしれません。
私たち歯科技工士は、口腔内スキャナーが普及した際に、いかに品質の良い補綴物を製作するかが使命となります。口腔内スキャナーを使うと、そのデータを元に模型がない状態で補綴物を製作することができますが、ラボ側で適合や咬合の確認をする場合には、3Dプリンターで模型を作る必要があります。そこで、現在販売されている歯科用3Dプリンターの性能がどの程度なのか、メーカーにお願いしてデモ機を借りて検証してみました。
今回借りたデモ機は、アメリカ、Formlabs 社製の「Form2」。精密な造形ができる光造形型(SLA)を採用しており、液体エポキシ樹脂をレーザー光の照射で硬化させます。他社の口腔内スキャナーでスキャンしたデータ(STLデータ)にも対応できるようです。
さて、実際の検証手順は次の通りです。
- 口腔内スキャナーで石膏模型をスキャン
- 石膏模型で通常通りパールインレーを製作
- スキャンデータから3Dプリンターで模型製作
- ②のパールインレーを③の模型で適合確認
石膏模型を3Dプリンターで作った模型におきかえて、補綴物の適合精度を調べました。3Dプリンターの素材は、従来から模型製作で使われているエポキシ樹脂ですので、製作中に変形するという心配はなさそうです。そして肝心の精度はというと、パールインレーが吸い付くように模型に収まり、マイクロスコープで見ても隙間が見当たらないくらいで予想以上でした。石膏模型の裂溝や気泡までもが忠実に再現されていました。
今回の検証で、3Dプリンターが口腔内スキャナーとの相性が良く、精度面でも臨床レベルで十分に活用できるレベルまできていることが分かりました。口腔内スキャナーの導入率は、全国でまだ数パーセントだそうですが、今後もっと普及率が高まることは予想できます。機械化によって、今までの診療~製作の流れが劇的に変化する時がすぐそこまで迫っています。