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義歯作成のために印象採得するコツとは?やり方や嘔吐反射を防ぐ方法も解説

義歯作成のために印象採得するコツとは?やり方や嘔吐反射を防ぐ方法も解説

印象採得がなぜか上手くいかない…と壁にぶつかることがあると思います。

印象採得をうまくできるようになるには、コツがあるのです。

そこで、この記事では義歯作成のため印象採得をしても上手くいかない、何が悪いのか分からない方に向けて、歯科医師としての経験をもとに解説していきます。

義歯作成の印象採得の手順とコツ

印象採得は義歯作成のために重要となります。

残存歯はもちろん、筋肉や歯肉、歯槽骨の形、口を動かしたときの小帯など忠実に型取りすることで患者にぴったり合う義歯が出来上がるのです。

その手順を既成トレーと個人トレーに分けて解説していきましょう。

既成トレー×アルジネート印象

既成トレー×アルジネート印象の手順は以下の通りです。

①既成トレーの試適

歯肉や残存歯、にトレーが接触していないか確認し、トレーを手で広げてトレーのサイズを変更しましょう。

上顎なら上顎結節を覆うサイズ、下顎ならレトロモラーパット(臼後三角)を覆うサイズにします。

ユーティリティーワックスやソフトワックスなどでトレーの大きさや深さを足すのもおすすめです。

②アルジネート印象材を練和

ラバーボールとスパチュラで練和する際に、水の量に注意しましょう。

顎堤までトレーから遠い場合は固め、トレーがぴったり合う場合は少し柔らかめの方が綺麗に印象出来ます。もちろん気泡は厳禁です。

③印象材をトレーに盛る

気泡が入らないように、スパチュラでなるべく一度でトレーの端から端まで盛りましょう。

また、嘔吐反射を防ぐため上顎の場合は最後に上顎の口蓋部分の印象材をスパチュラで軽く落としてください。

④口腔内に入れる

どうしても気泡が入る場合は歯や粘膜の唾液・水分はエアーで飛ばします。

また、トレーがぴったりな場合は一番採得したい場所を気持ち後の方に加圧してトレーを入れることで、アルジネートが流れ出して印象採得できるでしょう。

トレーがぴったりではない場合や顎堤からトレーが遠い場合は、アルジネートシリンジテクニックを使います。

先にシリンジもしくはスパチュラなどで柔らかめのアルジネートを口腔内に流し込んでおいてください。

そうすることで、印象圧をあまりかけずに綺麗に印象採得できます。

⑤ 口腔内から外す

コツ:印象材が固まったら、アルジネートと粘膜面にエアーを入れると外しやすいです。

個人トレー×シリコーン印象

個人トレー×シリコーン印象の手順は以下の通りです。

①個人トレーの試適

歯肉などにあたる場合はバーを使ってトレー自体を削ります。その後、アドヒーシブなどの接着剤をトレーにさっと塗り5分以上乾燥させましょう。

グローブは硬化を早めるラテックスではなくプラスチックグローブを使用してください。

②口腔内を乾燥させる

エアーで唾液や水分を飛ばします。

③シリコーン印象をトレーに盛る

気泡が入らないように、一度でトレーの端から端まで盛ります。

まず、ヘビーボディーを使用し、凹面になるように盛り、その後ライトボディーを歯列に沿って盛ってください。

④口腔内に印象材を入れる

口腔内に直接ライトボディーをあらかじめ気泡の入りやすい場所や特に採得したい場所に盛り、素早くトレーを入れましょう。

⑤口腔内から外す

5分程度手で保持しておくと良いでしょう。

難しい場合は、ロールワッテを噛んでもらい保持してください。外しやすいように、粘膜面と印象材の間にエアーを入れながら外します。

義歯作成のための印象採得で嘔吐反射を予防するコツ

嘔吐反射の多いアルジネート印象についてのコツを紹介します。

印象材の量

トレーの最後臼歯には盛り過ぎないようにしてください。上顎の口蓋部は印象材を少し取り除きます。

逆に、歯がない部分、顎堤を取る場合は多めに盛ると良いでしょう。

印象材の硬さ

トレーがぴったりな場合は水の量は多めで、トレーが合わず顎堤までの距離がある場合は水の量は少なめにしましょう。

チェア角度や患者の態勢

印象材だけではなく、チェアの角度や態勢でも大きく変わります。チェアは起こしておきましょう。

また、正しい顎や舌の位置を定めるためにも、チェアにもたれかからず普段の姿勢で待ってもらってください。

印象材を口腔に入れた後は、下を向いてもらうことで口蓋の方へ印象材が流れるのを防げます。

声かけ・バキューム

印象材が口に入った後は声掛けをします。

「口呼吸ではなく鼻呼吸をして下さい。」「ゆっくりと息をはいて下さい。」などと声をかけ、緊張を和らげてください。

さらに、バキュームを使用して唾液排除、もしくは膿盆などに唾液を出してもらいましょう。

印象材の外し方

印象材が固まったら、残存歯(ぐらぐらの歯が抜け落ちたりしないよう)に負担のないようにエアーで隙間を作りながら外します。

義歯作成に重要な筋形成のコツ

筋形成は、義歯床の辺縁周囲の組織の機能的な動きに適合させるために、患者に筋運動をさせて印象辺縁を成形することが目的に行われます。

個人トレーを作る際や、アルジネート印象材で義歯を作る際に重要になる筋形成のコツをご紹介します。

筋形成の取り方のコツ

「いー」、「うー」、「おー」、吸啜を行ってもらってください。

また、指を使って頬を内側から伸ばしたりすることで、筋形成がうまくできるでしょう。

下顎の場合は、舌を「べー」と出す練習を、トレーをいれる前に行ってから、印象時に行うと綺麗に取れます。

義歯作成のためにピックアップ印象採得をするコツ

ピックアップ印象とは、義歯修理や増歯をする際の作業模型を作るための印象のことです。

手順とコツをご紹介します。

ピックアップ印象の正しい手順

①義歯を正しく口腔内に装着

この時にクラスプが正しい位置か、浮いていないかなどを目視と会話などして確認してください。

②印象採得

アルジネートもしくはシリコーン印象材で採得します。

とくにクラスプ部分や増歯部分には寒天やライトボディーを口腔内にシリンジで流してから採得するようにしてください。

③確認

義歯は、トレーと一緒に口腔内から外れます。

ピンセットなどを使用して印象材から義歯を外しましょう。

まとめ:コツをつかんで義歯作成のための印象採得を上達させよう

義歯作成のための印象採得は、義歯修理や新しい義歯を作るなど目的によって方法が変わります。

まずは、一番印象したい部位を確認して取り組むことが大切です。

また、同じ口腔内の患者がいないため、経験や回数を重ねることで上達します。

上達の第一歩として、今回の記事を参考にコツを掴んでいただけたら幸いです。

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